待機児童の問題とともに、保育士の待遇についても注目されるようになってきました。
事務作業が多く持ち帰り仕事などがあるにも関わらず、低賃金で大変だという話。
それに合わせるかのようにして、保育園にITシステムを入れて業務を軽減しようというサービスが増えてきています。
IT化したらデータの一元管理はできるのですが、保育士目線で見た場合、本当にICTが必要なのかを考えたいと思います。
自分の経験上から感じた部分として書いていますので、作業状況に関して園によって違う場合もあるかと思います。
その点については同じ状況でないことを配慮いただければと思います。
保育園ICTシステムの発端は、園児の父親からの発想
保育園ICTシステムがリリースされるにあたってのインタビュー記事を読んだのですが、開発の発想となったのは、連絡帳やお知らせなどを見ていないので子供の状態がよくわからないという父親の発想でした。
正直、その記事を読んだときに思ったのは、「連絡帳くらい自分で見ればいいのに」というのがこのICTシステムに疑問を投じる発端です。
また、保育園から連絡帳やお知らせを通じて、園や子供の様子を知るという仕組みに対して、「パパだって子供の様子を知りたい」という気持ちに十分応えられるものです。
それをなぜか、「お迎えに行かないから、園の様子がわからない。子供の状態がわからないから、いつでも見られるようしたい」んだそうで。
よく考えてみると、保育園を取引先と考えた場合、取引先の仕事内容が自社の担当者(この場合はママ)には伝わっているけれど、自社内で連携されてないから、知りたい人(この場合はパパ)がまた取引先に「わからないから、わかるように仕組みを作ってくれ」ということなんですよね。
普通に仕事を考えるとこのやり取りって、「先に担当者に伝えたんだから、自社内で全部連携取ってくださいよ!」っていう話になるのでは。
取引先から見たら、なんと面倒な客だろうというのは想像できます。
保育士目線でという前提で書いていますが、保護者目線で考えても家庭内で解決すればいいのにという印象しかありません。
しかし、ICTを開発したい発想者は、この考えはなかったようです。
業務をIT化することで保育士の業務負担は軽減されない
IT化する部分は、主に書類です。
ただし、業務内容の記録を紙媒体から電子データへ変えただけで、業務の中身には何も変わりがありません。
定型業務で機械的な作業を行う場合には、IT化する効果はあります。
何か計算するとか、集計するとか。決まったものであれば、機械が変わりに行うことでミスは防げ、時間は短縮できます。
保育ICTシステムでよく言われたのが、連絡帳です。
食事、体温、排せつの記録など、ワンタッチでできるということですが、活動に関するコメントなどは子供によって変わります。
連絡帳以外にも、毎月、毎週の計画の作成があります。
これはICTで業務負担が軽減されるかですが、毎月、毎週の計画と振り返りについては、子供の発達に合わせながら計画します。
計画を立てること、振り返ることは考える作業が入ります。
どう保育するか、子供それぞれはどのように過ごせたのかというのがインプットになり、そこに考察が入りアウトプットになります。
計画の策定、実施、振り返りというのは、どの仕事でも行いますが、保育も同様です。
これをICT化したら、計画策定から振り返りまでの作業そのものが軽減できるでしょうか。
答えはいいえです。
あくまでもアウトプットの媒体が変わっただけで、ICT化されたから業務が減ったり、簡単になったりするわけではありません。
ICT化することで本当に時間短縮ができるのか
書類作成に追われるからこそ、業務にICTシステムを導入すると楽になりますという話が多いですが、本当にそうでしょうか。
パソコンやスマホを使った作業をするときに、誰でも感じているのではないでしょうか。
「起動に時間がかかる」
「データ入力しても、途中で反応しないで少し待つことがある」
ちょっと不便を感じるときもあるのではないでしょうか。
実は、この「ちょっと不便な時間」や「起動中に待たされる時間」は保育にとっては邪魔になります。
理由は、簡単です。
保育士は目の前の子供を保育するのが仕事のため、何かあれば子供優先で対応します。
そのため、ちょっとの待ち時間の積み重ねで少しずつ時間が奪われるので、書類作業を一刻でも早く終わらせたいんです。
手を止める時間が発生するのがもったいないんです。
これは、保育時間中に書類を作成する時間が組み込まれていないために、おそらく保育士の誰もが感覚として持ち合わせていると思います。
書類作成は午睡中です。
午睡中、子供が寝ているわけですが、必ずしもずっと寝続けてくれるわけではありません。
乳児だと、かなりの確率で起きます。
そうなると、起きた子の対応をしなくてはならないので、書類を中断することに。
ですから、とにかくどんなときでもすぐに対応できるように、なるべく書類は早めに終わらせてしまいたいのが本音です。
これが、書類作成時間が個別にきちんと確保されていれば、そういうこともないと思います。
ただし、現状では書類作成は午睡の合間が多いため、書類だけに集中できる時間がほぼないことになります。
パソコンやスマホを使ったときに、多少なりとも待ち時間が発生するのであれば、時間短縮どころか、ムダな時間が発生します。
こうなると、紙を取り出して記入するほうが早いことになります。
紙は書ききってしまえば終わりですよね。言い換えるなら、書いた瞬間から内容が保存されていきます。
パソコンやスマホは保存したときに、その保存時間ですら待ち時間として発生し、保存されたかの確認ができないと、その場を安心して離れることができなくなります。
とっさの何かにすぐに対応したい時間がずっと続いている状況では、パソコンのような電子媒体より紙に書いたほうが、確実に書けますし、きちんと保存されたのかも気にする必要がありません。
書類作成が時間短縮になるかどうかですが、これも結局のところ、内容を記入するためには何を書くかのインプットをしたあとに媒体にアウトプットするまでの作業があります。
媒体が変わったところで作業内容は変わりません。
結局作業の時間は短縮されませんし、むしろ待ち時間が発生するので、その分時間が延びることになります。
ICTシステムを導入するために必要なのは人数分の端末
連絡帳の記入は、保育士一人で記入していません。クラスに配置されている大多数の保育士が連絡帳を記入することになります。
そのため、システム利用端末は、同時に使用する人数分は最低限用意する必要があります。
スマホで記入することも考えられますが、個人が利用しているスマホで代用するのか、それとも園で用意するのか。
また、データ受信は個人のスマホですと余分に料金がかかることも考えられるので、wi-fiなどの設置も必要になる可能性があります。
それでもあったら便利だと思うICTシステム
ある保育ICTシステムの内容を抜粋しました。
- 登降園管理
- 保育日誌・指導計画の管理
- 園児台帳の管理
- おたより作成/メール配信
- 延長保育料自動計算
- 写真の販売
- 勤務シフト作成
- 業務の引き継ぎ情報の共有
- 請求管理
この中であったら楽になるだろうと思ったのが、写真の販売と請求管理です。
写真の販売の場合、写真を掲示して、番号を記入してもらい、必要な分を申込むときにお金を受け取るのですが、申し込み枚数とお金の確認を行う時間は、保育士にとっても負担が大きいです。
受け入れのときによく写真の申し込みがありますが、受け取ったお金もすぐに所定の場所に保管する作業があるので、結構手間を取られてしまいます。
実際やってみると、子供を受け入れながら、申し込み用紙の中身と受け取ったお金の確認をして、その後お金をしまうのって、結構目が回ります。
反対に、システムとしてお金のやり取りも発生せずに、電子決済され、申し込まれた内容だけ余裕のあるときに確認してプリントされた写真だけを渡すような仕組みであれば、とても楽になると思います。
請求管理も内容として保育士が関わるような場合であれば、同様のことが考えられますね。
例えば、貸しオムツをその月で何枚使ったかなど。
これも、直接金銭のやりとりがないほうが、負担軽減になるので助かると思います。
また、システムでは現場の保育士が必要とするものと、主任・園長が必要となるものが一緒になっているため、誰にとってどの程度必要なのかを一つのシステムで言及するのは難しいと思われます。
まとめ
保育園にICTが必要かと考えると、必ずしも必要でないものと、あったら便利だろうなというもの、どちらもありました。
ICTシステム導入に補助金が出るので、検討をしている保育園も多いと思うのですが、システムを最大限利用できなければ、費用を無駄遣いすることになります。
ICTシステムを入れたら業務を軽減できるかもしれないと考える前に、どうしたら現状で業務軽減できるか、何か仕組みは作れないかを考えるほうが、有効ではないかと思います。
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