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俺は決して忘れない

3000文字チャレンジ

脳内垂れ流しブロガー ななこです。

前回の3000文字好きな場所の続きです。

ルール上、本文にリンクが張れないので、本文終了後に前回のURLを張ります。

まだ前回分が未読で、先に前回分を読みたい方は画面最後のリンクからお読みください。

 

 

香澄に告白してから、俺の生活にも弾みが出た。

しばらくの間は「香澄さん」「万丈くん」と呼び合っていたが、いつのまにかそれが「香澄」「龍我」に変わっていった。

会えるのはいつもと変わらない。公園か病室。

 

天気のいい日に公園で、たまに香澄は俺の髪を編んでくれる。

 

勝利のまじないだってさ。

俺の頭に編み込みが3本。

香澄は手が器用で、俺には真似ができない。

 

二人で過ごせる時間は楽しいが、入院生活も長引いてきて、香澄が回復する見込みは全くない。

 

手術すれば治るのだが、その費用がない。

ファイトマネーを手術費用に充てることを誓って、俺は格闘家としての力をつけていった。

 

 

俺は医者ではないから、香澄を治してやることはできない。

でも、俺がファイトマネーを稼げれば、手術をさせられるし、香澄を病院から出すことはできる。

 

挑まれた試合は拒まず、相手を叩きのめし金を手にする。

反対に、少しでも金になりそうなイベントがあれば出場するのを惜しまなかった。

 

気がついたら、いつの間にか俺は格闘界でもトップクラスのレベルになっていた。

どんな相手と戦っても、負けることはなかった。

あと少しで香澄の手術費用も出せる。

 

戦っている俺の姿を見て、香澄がこう言った。

「龍我、私いいの。私のために戦わないで。その拳は自分のために使って」

香澄自身に俺が責任を負わせているのか、時々香澄は悲しそうな顔をする。

 

違うんだよ。香澄。
香澄が好きだから、戦うんだ。

 

どうしたらわかってくれるんだろう。

 

俺は悩んだ。

 

香澄の病気を治して、病院から出してやりたいだけなんだ。
それなのに、なんで香澄は責任を感じているんだろう。

 

 

そのとき、ふとある考えが頭をよぎった。

もしも、これなら。

きっと。

 

 

いつの間にか俺たちが出会ってから、2年も経っていた。

毎日他愛もない話をして過ごしていたが、そろそろ決着をつけようか。

 

ある暖かい日、桜の花が満開で、俺たちはいつものようにあの桜の木の下にいた。

今日だって昨日と変わらない。

でも、今日こそ、俺はずっと考えていたことを香澄に伝えよう。

「なあ、香澄。前にこういったの覚えてるよな。私のために戦わないでって」

 

「うん」

 

「何か責任感じているのか?」

 

「だって、龍我。龍我は私の手術費用を稼ぐために戦っているんじゃないの?」

 

「そりゃあ、まあ確かにそうだけど・・・」

 

「だから、そんなふうにしなくていいから。私のためなんて・・・」

 

「あのなあ、香澄。お前何か勘違いしてないか?これは俺のためでもあるんだよ」

 

「龍我の・・・ため?」

 

「そうだ。俺のためだ。いいか、香澄。お前は手術して病気を治して、俺と結婚するんだ」

 

「私が・・・?龍我と・・・」

 

「そうだ、香澄。だから俺と結婚してくれ!!!」

あ、結婚してくれはまずいな。

 

俺がどうしようと悩んでいる間に、香澄は涙をぽろぽろとこぼしていた。

 

あ、え、ちょっと待って。
泣かすつもりじゃなかったんだ。

 

ヤバい。どうしよう。

俺は動揺しながらも、香澄を泣かせたらいけないと思って、改めて言い直した。

 

「香澄さん。僕と結婚してくれませんか?」

 

香澄は、それでも顔をくしゃくしゃにしたまま泣き続けていた。

ひとしきり泣いた後、ようやく落ち着いた香澄が言った。

 

「龍我・・・私でよければ一緒になってください」

 

「香澄。お前でよければなんかじゃないんだ。お前がいいんだ」

 

「龍我・・・」

 

俺は香澄の肩にそっと手をやり、そのまま抱きしめた。

 

 

 

香澄に結婚を申し込んでからは、俺はさらに戦いに力が入った。

手術費用を稼いで、今すぐにでも病院から出してやれるように。

そしてもうすぐその目標も達成できる。

 

次の試合が迫ってきていた。

 

ある日バイトに行く途中、スーツ姿の見知らぬ男に呼び止められた。

 

「君、万丈龍我くんだろ?」

 

なんだ?こいつは。

 

「ああ、俺が万丈龍我だ。なんか用か?」

 

「君が次に出る試合なんだけどね、一つお願いがあるんだよ」

 

「なんだ?そのお願いって」

 

「君が今度対戦する相手。君とほぼ互角の力なのは知ってるだろう?」

 

「ああ、あいつか。ま、今度も俺が勝つけどな」

 

「それなんだけどね、うまいことやって君が負けてくれないか?」

 

「はぁ?なんだと?!この俺に負けろっていうのか?」

 

「そうだ」

 

「ばかなこといってんじゃねーよ!!」

 

「いやいや、ばかなことじゃないよ。どうも君は金に困っているそうじゃないか。どうだね。君が負けたら次の試合で出るファイトマネーを君に有利なように増やしてあげよう」

 

「おい、こら。冗談もほどほどにしろよ」

 

「冗談なんかではない。私たちも興行的に君に勝たれると困るんでね。しかも君は実力者だ。次の試合で君が負けるっていうのは確実とは言えない。だからだよ。最初から負けてもらえたら、こちらとしても助かるんだが。そして君は十分な金を手にできる。こんなにいい話はないと思うんだがね」

 

俺は男の言っていることが理解できなかった。

 

八百長なんて。

必死に戦ってきた俺に、八百長をやれだと?

 

だが、この試合で男の言う通りにすれば今まで以上の金が手に入る。

そして、香澄の手術も早められる。

 

俺は黙ったまま立ち尽くしていた。

 

「今すぐ、答えを出さなくていいよ。君の考えが決まったらここに連絡をくれたらいい」

そう言って男は俺に名刺を差し出した。

 

 

 

 

そこから先は転がるように、俺の人生は落ちていった。

 

結局八百長試合が発覚して、俺は格闘界を永久追放された。

 

あいつらに騙され、殺人犯にまで仕立て上げられてしまった。

 

そして、香澄はもういない。

俺を騙したあいつらに利用され、最後には俺の手の中で消えていった。

 

 

香澄、お前を取り戻したい。

元の世界に戻して、お前が生きていたあのときのように。

 

 

 

 

「おーい!万丈ー!」

 

戦兎の声がした。

「お前、またここに来てたのか」

 

「なんだよ。来たら悪いのかよ。そういう戦兎こそ、なんでここに来るんだよ」

 

「そろそろ夕飯でもと思ってね。げんさんが夕飯作るって言ったら、カズミンが怒ってさ。げんさんの料理、ほらあれ不評だったろ。だからカズミンが俺が作るって言って聞かないんだよ。で、今カズミンが作ってくれているんだけど、お前も手伝えよ」

 

「はあ?なんで俺が飯作るのに手伝わないといけないんだよ?俺が料理できないの知っているだろ」

 

「まー、カップラーメンにお湯入れるくらいはやるけどね」

 

「だったら、用ねーだろーよ」

 

「まあまあ、そう言わずに。皿くらい運べるだろ。だからnascitaに帰って飯の準備しよーぜ」

 

「しょーがねなー、帰ってやるかー」

 

 

 

俺たちは公園を後にした。

これからも戦兎たちと一緒に戦って、このまま世界を取り戻してやる。

待っててくれ、香澄。

 


制作後記

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

登場人物の名前の通り、仮面ライダービルドをベースにした二次創作になります。

万丈の彼女は物語序盤で亡くなるんですが、彼女を思う万丈の姿を見てたら、「絶対万丈が香澄さんに一目惚れして、アタックしたでしょ!」と思い書きたくなりました。

というわけで、彼なりにがんばった結果として読んでいただけたらうれしいです。

また、3話それぞれのタイトルは、つなげて一つになるようにしています。

前回までの話は以下のリンクです。

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