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始まりのあの場所で

3000文字チャレンジ

脳内垂れ流しブロガー ななこです。

3000文字チャレンジ、今回のテーマは「好きな場所」です。

最近創作系を目にするようになって、気になってたのですが、勝手に妄想してしまったので書きました。

 

 

ひんやりとした風を感じて目が覚めた。
そろそろ午後4時か。
芝生に横になって空を眺めていたら、いつの間にか眠ってしまったらしい。空の色もなんとなく薄くなって、日差しが弱くなっているのを感じる。

ここに香澄がいたらな。

三年前

俺は試合中に相手の放ったパンチをもろに受けてしまい、そのまま気を失った。気が付いたときには病院だった。
脳震盪を起こしたせいで、精密検査を受けるためしばらく入院していた。ベッドで目が覚めた後に起き上がってみたら、目眩はなかった。
ずっとベッドにいるのも暇だから、病院の中を歩いてみることにした。
体を動かさないと筋肉は訛るし、動いてないと落ち着かない。

入院している部屋がある階を抜け、1階まで降りてフロアをうろうろする。特にやることもないのだが、人が多いところのほう俺が歩いていてもおかしくはないだろう。

適当に歩いては時々足を止め、窓の外を眺める。
しかし、本当に何もできないな。
早くここから出て、またトレーニングしないと。
病院の窓の先には公園が見える。大きな池とその回りには遊歩道があった。
回復したら、ここで走るのも悪くないな。

そんなことを考えながら部屋へ戻ろうとしたら、急に目の前が暗くなった。
ふわっとした感触とともに体が崩れ落ち、その瞬間床の固い衝撃を感じた。

「うっ」

痛みで思わず声が出る。

「大丈夫ですか?」

同じ年くらいだろうか。花柄のワンピースを着た女性が俺に声をかけた。

「大丈夫、大丈夫。あっつー」

俺は大丈夫と言いながらも、床にそのままぶつかったせいで腕を打ちつけたのだが痛いのを我慢していた。

「すみません。今この人が倒れてどこか打ったみたいで」

女性が看護師に声をかけてくれた。
看護師が近寄ってきた。

「あ、万丈さん?検査終わって結果が出るまでむやみに部屋から出ないでくださいって言ったじゃないですか!」

俺は看護師に注意されてしまった。

「今、ストレッチャー用意して部屋まで運びますからね」

看護師が電話をかけた。
すぐに他の看護師と担当医が駆けつけてきた。俺はそのままストレッチャーに乗せられて部屋まで戻った。

俺に声をかけてくれたあの女性はストレッチャーが来るまで待っていたが、俺が運ばれていくときに、そのままどこかへ行ってしまった。

お礼の言葉も言ってない。

彼女、かわいかったな。

清楚な雰囲気で、ぶっきらぼうな俺からしたら全く反対の生活をしてきたタイプだろう。

病室に戻った後、彼女のことを思い出してにやけてしまった。

また会えるといいけど、無理だろうな。
どこかでまた会いたい。

そんなことを考えているうちに、そのまま眠ってしまった。

精密検査の結果が出た。特に何もなかったらしい。程なくして俺は様子を見ながら退院ということで、彼女に会った後1週間に病院を出た。

ジムのトレーナーからいい加減自分でできることは自分でやれと言われて、ロードワークのメニューを考えるようになった。

以前は、トレーナーが考えたメニューで決められた道を走っていた。しかし、自分で考えるとなると、距離を考えなくてはならない。
頭の悪い俺は、いちいち道の長さなんて計っていられないから、わかりやすい方法を取ることにした。ジムの近くにある公園の池の周りの距離が決まっているから、そこを走ることにした。
俺が入院していた病院の前にあった公園だ。

池の外周はそれなりの距離で1.5キロほど。
10周走れば、まずまずの距離は稼げる。

俺は毎日公園でトレーニングすることにした。

早朝だから公園には、ほぼ人はいない。
犬の散歩をする人やジョギングが趣味な人がいるくらいで。

朝は静かだ。

池の回りの遊歩道をひたすら走る。

スタートではないが、いつも走る道の目印にしている大きな桜の木がある。

その桜が見えると1周のカウント。

桜の木の近くにベンチがあるが、ここに誰か座っているのを見たことがない。

あと3周で今日のロードも終わりだ。
桜の木が見えた。

誰か座っている。

俺がさっき走り抜けた後に来たらしい。

桜の木が近づいてきた。
ベンチに座っている人もはっきり見える。

女性のようだった。
白いシャツとベージュのフレアスカート。

桜の木が近づいてくるとともに、女性もまた近くなった。

本を読んでいるようだった。

俺が足を進めるとさらに近づいて、もうすぐそこまでという距離まで来た。

女性の顔が見えた。

あの時の彼女だった。

そのまま足を止めることはできないので、彼女の前を走り抜けた。

でも、俺はもう前の俺じゃなかった。

何食わぬ顔をしたままただの通行人として走り抜けたものの、俺の頭は彼女でいっぱいになった。

まさかもう一度会えるなんて。

池の回りをもう1周したときにも、彼女はいた。

桜の木が近づくと、なんだかどきどきした。

声をかけたかったが、かけられなかった。

残りの周も走りながら考えるのは、彼女のことばかり。

ロードを終えた後、俺は彼女に声をかけるか迷った。

でも、今はトレーニング中。そんなことをしている余裕はない。

ただ会えただけでいい。
きっと、またここで会えるはず。
そう願うしかなかった。

あれから、毎日公園でロードをしているが、あれ以来彼女に会うことはなかった。

ロードの後はジムでトレーニング。
それが終われば夜はバイト。

そんな時間を過ごして、毎日が終わる。

練習とバイトだけの毎日。

それでも少しずつ結果が出るようになっていった。

もう会えないのかな。
たまたまあの公園にいただけなのか。

もしかしたら会えないかもしれないと思うと、あの時声をかけなかったことを後悔した。

彼女の姿を見てから1か月後。

いつもと同じようにロードを公園でやっていた。

いつもの桜の木が見えた。
すでに俺は走り始めていたが、いきなり彼女らしい姿が目に入った。

あの肩にかかるぐらいの髪。多分彼女だ。

今日はもういたのか。
相変わらず、俺は足を止めることなく彼女の前を走り抜けるしかなかった。でも彼女の前と通り過ぎるときに、顔をはっきり見た。
やっぱり彼女だった。
本は持っていたようだったが、読む気配はなくそこに座っていただけだった。

時々ここに来ているのかもしれない。

結局また声をかけることなく、俺はジムへ戻るだけだった。

その後もあの公園へ毎日ロードに行くのだが、彼女が現れるのは不定期で時間も決まっていなかった。

ただ、確実にわかることは、彼女が公園に来ることだけははっきりしていた。

そして、彼女に接近するきっかけはいきなり訪れた。

 


 

まだ終わってなくて続きます。

続きは書けたときに、また。

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